とある地域の妖怪事典blog

下野国を中心として、怪異妖怪俗信など広く拾っていきたいと思います。地域の文化や伝承の再発見、教育のためなど広くご活用いただければと公開しました。

2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

庚申山の猿になった子

八嶋定岡の『猿著聞集』(文政十年序)の二巻の「足尾村の何がしが子山に入て猿になりし事」による。 足尾のある人の子どもがどこかへ行ってしまった。両親はとても悲しみ、十日ばかりして庚申山という山へいった。岩の上に猿がたくさん遊んでおり、そのなかに…

ナラの木

田沼町での話。 「ナラの木でミツマタが出ているのを山の神様にあげると、山の神様がそこで休むといわれる。そのナラの木を二・三年前に切ったら「ヒエーヒエー」と音がして切りくずを吹き出したという。しかし賢い人がいて、山の神様の怒りでないことを説き…

ズイトン

芳賀郡東高橋では子どもが遅くまで起きているとズイトンが来るぞとおどかされたという。 ズイトンは主屋に雨戸の穴を見つけると尻尾を入れてきてズーイと引っ張るのだという。その抜けたときにトンと音がすることからズイトンと呼ばれているが、その姿はわか…

天狗だおし

田沼町に伝わる。 山仕事に行って昼寝をするときに山の神様に「いついつになったら起こして下さい」といって寝る。するとその時刻になると大木の倒れる大音響で目が覚めるが、何も倒れていない。 (国学院大学民俗学研究会編・発行『民俗採訪』四十一年度 196…

老猿

鹿沼市の世間話として報告がある。世間話と報告に書かれるからには話者に近い時代が想定されていたのだろう。 アシ沢に昔、老猿が住んでいた。 老猿は猟師である夫に化け嫁と契った。やがて嫁は毛むくじゃらの赤ん坊を産んだ。夫はその子を投げ捨てておいた…

山の神

田沼町に伝わる。ある朝山へ二人で行って、仕事をしながら山の神はいるかいないかと言い争っていた。山から帰る途中で山の神様が背負っているかごを後ろからゆさぶったという。 (国学院大学民俗学研究会編・発行『民俗採訪』四十一年度 1967年 p75)

質屋の女

下野市南河内の世間話。 坪山の質屋で働いた女性に狐憑きと呼ばれた奉公人がいた。 うちの中へ、何か来るとか、石がゴロゴロ入って来るなどの変事が起きた。その女性がおかしいということになり、よそへやったらそれがなくなったという。 (『南河内町史』民…

人をよぶムジナ(戸叩き型)

藤岡町に伝わる。 むかし、渡良瀬川の向こうから人を呼ぶ声がする。村の人たちはムジナの仕業といった。ある夜、夜なべ仕事をしていると人を呼ぶ声と戸を叩く音がしたので「ムジナ汁にしてしまうぞ」と怒鳴ったら、人の名を呼ぶ声も戸を叩く音もしなくなった…

和光院の狐(戸叩き型)

栃木市に伝わる。皆川寺明院の末寺の東宮和光院というお寺が城内神田にあった。住職は素頓(すとん)坊といった。 素頓坊は夜な夜な誰かに起こされる。 寝ずの番をし、戸の隙間から外をうかがっていると、大きな狐が現れ、そのふさふさしたしっぽで戸を上から…

狐の嫁入り(南河内)

南河内の薬師寺一丁目に下陰(したかげ)というところがある。そこには丘があり稲荷神社があるので、そのあたりを稲荷台(いなりだい)といった。そこから、田中の方へ下る坂を夏目坂という。そこには狐にまつわる話が伝わる。 ある若者が家に帰ろうとしたが大き…

眠猫

眠猫(ねむりねこ)は、日光東照宮奥宮参宮入り口の、東廻廊の潜門の上にある眠っている猫の彫刻。 左甚五郎の作という。 この眠猫は、魔除けの猫ともいわれ、この彫刻のあとに東照宮には一匹のネズミもいなくなったという。(日光市史編さん委員会編『日光市史…

死の予兆の音

南河内町の馬場(ばんば)に薬師堂がある。人が死ぬときにはそこから米搗く音がするという。 (『南河内町史』p993) また、田川の橋の墓場には人が死ぬ前の晩にはお膳の茶碗、お椀を川で洗う音がするという。 (前掲p993~994)

京路戸山の大蛇

田沼町に伝わる。 田沼町多田から岩舟町小野寺との間には京路戸山を通る山道があった。 昔からここで大蛇を見たという人がおり、きのこをとりに行った老人が蛇に飲まれそうになり、やっとのことで家に帰ったが幾日も起きられなかった。また、子どもを連れて…

ヤマガミ様

南河内町に伝わる。子どもの頃にいつまでも外にいると、山の神様とかヤマガミ様、オーガミ様、イヌガミ様が来るから早く帰るようにといわれた。また、人隠しがくるから早く帰ってこいともいった。( 『南河内町史』p975) 子脅しの怪である。おなじく南河内…

ハナトリ塚

南河内町薬師寺にハナトリ塚という塚があった。 ハナトリ塚という名前の塚は複数あった。 田中のハナトリ塚と呼ばれたところでは、馬を引っ張る鼻取りの鼻取り小僧がいじめられ殺されたが、その怨念が祟るのを防ぐという。 伝説であるが、そうしたところの田…

オンバショウ塚

南河内町薬師寺にあったという塚。 雨の降る晩に「オンバショウ、抱っこしょう」と子どもがピチャピチャ歩いて通るという。 昔はお子守小僧という学校も行かないで子守に出される子どもがいたが、それが悲しくてそこで泣き死んでしまったという話もあったら…

三峰様

三峰様は盗難避けの神様である。 南河内町に次の話が伝わる。 信じて祀った家で毎晩米が盗まれる。これほど信心しても泥棒が入るのでは信心をしないと神社に対して家の主人が怒った。 すると、その明日の晩泥棒をみると、家の息子であった。息子は米をどこか…

【こらむ】大佐用のこと・栃木の智子さん

大佐用156にこのblogが。 (http://yokaidoyukai.ho-zuki.com/taisayo156.htm) また、この記事以外は淡々と更新していきますが少しかわったことを記念として。 氷厘亭氷泉さんは稀代の俗信愛好家である。 大佐用ではミミズの絵を書いてくださった。 ミミズが…

十の字

ムジナには白い毛で十の字がかかれている。 本当に見たことのある人は少ないが、鉄砲うちに見せてもらうと本当に胸に縦に一本、へそのあたりに横に一本、白い毛で十の字がかかれていた。 「あいつはムジナだ」とか「十の字だ」という悪口がある。 (『栃木市…

犬神様と弘法様

南河内町本吉田にある。弘法大師はインドから麦の種を持ってきて伊呂波四十八文字は中国からもってきた。そして弘法は犬を殺したため、弘法と犬を祀ったという。十二師団が練兵場にした際に、邪魔になったので、弘法様と犬神様を移動させた。そこへ輜重隊や…

子育て幽霊

身持ちの女の人が亡くなり、墓へ埋められたが、夜中になると出てきて、墓場へ帰っていく。なにか必要なものを仕入れて墓場へ帰るのだろうか。そういうことが昔あったと言われている。 (南河内町史編さん委員会編『南河内町史』南河内町p959)

黄梅寺の生まれ変わり

南河内に伝わる。昔、黄梅寺という寺があった。現在は石碑と印塔だけが残っている。 見龍という僧侶は人に慕われ、亡くなったときにまた黄梅寺の僧侶に生まれ変わってもらうために墨で背中に黄梅寺と書かれた。背中に黄梅寺とかけばそういうあざの赤子が生ま…

墓地の俗信

墓で転んだときの俗信。 墓で転んだときには履き物を片方置いてこなければならない。 また、墓地で転ぶと三年以内に死ぬという俗信も広くある。(鳥畑隆治「国々の言い習はし(五)」「郷土研究」3巻2号郷土研究社 1915年 p56)

チュッシー

中禅寺湖で目撃されたという未確認生物。 UMA。ネス湖のネッシーのように日光にも未確認の生物の目撃情報があった。平成になってからも冗談のように会話にのぼることがあったが、ネッシーブームの産物の一つと思われる。

食用蛙の鳴き声

食用蛙はウシガエルのこと。 栃木市神田町で、夜な夜な牛の声に似たうめき声がする。 男達が集まり、堀端から正体を確かめようとしていると、買いたての自転車で帰りの人が通りかかった。大勢の人がいるので何事だろうと思ってよそ見をしているうちに川に落…

蚯蚓の鳴く声

芳賀郡でのミミズの声の聞きなしに「栗の花長く咲いて円くなれ」というものがある。 (加藤嘉一・高橋勝利編『下野昔話集』1975年 岩崎美術社 p167) ミミズの声がそう聞こえるということだが、ミミズは鳴かない。 栃木の例に限らずミミズが歌うとか声を出すと…

米とぎ婆さん

芳賀郡の童謡に「米とぎ婆さん晩方サーラサラ 薬師様でサーラサラ 子供さらべとサーラサラ」というものがある。 米磨ぎ婆さんという人さらいが、芳賀郡逆川村の木幡村にある薬師堂に住んでいたという伝説から生まれた歌。 (加藤嘉一・高橋勝利編『下野昔話集…

三人小便

芳賀郡の童謡。「三人小便地獄へやんな三人小便地獄へやんな」というものがある。 三人で並んで立ち小便をすると、そのうちの一人が死んでから地獄へ落とされるということから。 もし、三人並んでした場合には、着物の裾をくわえ、片足回りを三回すれば良い…

くまんざばばあ

栗山村に伝わる山姥。熊野沢婆。熊野沢(くまんざ)は栗山村の川俣の近くの大きな沢。イワナやサンショウウオなどを採集できる、人々の生活に欠かせない場所であった。そこに住むといわれた婆。 以下の昔話にくまんざばばあは登場する。 くまんざばばあに会い…

山の神と狐

那須郡大山田村でいわれる。 山の神の怒りで子どもが狐に殺されることがある。母親がどんなに強く子どもを抱いて寝ても知らぬ間に子どもはいなくなり、囲炉裏の中で死んでいるという。(民俗採訪 p19) 子どもが事故に会い、山の神や狐の仕業とされたものだろ…