とある地域の妖怪事典blog

下野国を中心として、怪異妖怪俗信など広く拾っていきたいと思います。地域の文化や伝承の再発見、教育のためなど広くご活用いただければと公開しました。

蚯蚓の鳴く声

芳賀郡でのミミズの声の聞きなしに「栗の花長く咲いて円くなれ」というものがある。
(加藤嘉一・高橋勝利編『下野昔話集』1975年 岩崎美術社 p167)
ミミズの声がそう聞こえるということだが、ミミズは鳴かない。
栃木の例に限らずミミズが歌うとか声を出すという話は多い。平成生まれの山口出身の女性から、子どものころにミミズが鳴いているということを友達に言われたことがあると聞いた。後にして思えばきっとオケラか何が鳴いているのだと思ったという。
近世期の『嗚呼矣草』巻之三[五十三]や『喜遊笑覧』にもそれを検証する場面がある。
各地の昔話にも蛇とミミズが、目を歌を交換し、蛇は目を持ち、ミミズは地中で歌を歌う。常磐村ではミミズはこの昔話の結末として「栗の花はながながと咲いてまるまるとなる めずら(ささげ)の花はまるまると咲いてながながとなる」という歌を歌うようになったとされる。(前掲 p137)
また俳句の秋の季語にも蚯蚓鳴くというものがある。ミミズは別名を歌女とも言うことからも、鳴く鳴かざるにかかわらず、声に注目されたようだ。