とある地域の妖怪事典blog

下野国を中心として、怪異妖怪俗信など広く拾っていきたいと思います。地域の文化や伝承の再発見、教育のためなど広くご活用いただければと公開しました。

犬神様と弘法様

 南河内町本吉田にある。弘法大師はインドから麦の種を持ってきて伊呂波四十八文字は中国からもってきた。そして弘法は犬を殺したため、弘法と犬を祀ったという。十二師団が練兵場にした際に、邪魔になったので、弘法様と犬神様を移動させた。そこへ輜重隊や騎兵隊が行くと必ずけがをする。仕方がないので練兵場の真ん中に犬神様と弘法様は祀ってある。( 『南河内町史』p974)

 弘法大師が中国やインドから麦の種を盗み、隠して日本に持ってくるが、犬に見つかり殺してしまうという話は日本各地に伝わる。麦は戌の日にはまかないのだという俗信が付随することもある。実際に南河内三王山ではそうした麦盗みの報告がある。「今日は戌だから播くんじゃないよ、死ぬ人が出るくらい大変だ」という言い方もあったという。

 こうした麦盗みの話が祀られているものの由来になっている点が特徴的である。

 また南河内では山神様、オーガミ様、イヌガミサマというものが子脅しに使われていた報告がある。イヌガミという名前はこの犬神様と関係があるかもしれない。

 犬神という憑き物は四国九州地方に伝承される 

 それは文芸作品などに使われるほど有名だ。しかし、この犬神様と名前以外に共通するところはない。別のものである。

 「犬」と「神」という単純な組み合わせの単語のため無関係だが偶然名前だけ一致したのであろう。