京路戸山の大蛇
田沼町に伝わる。
田沼町多田から岩舟町小野寺との間には京路戸山を通る山道があった。
昔からここで大蛇を見たという人がおり、きのこをとりに行った老人が蛇に飲まれそうになり、やっとのことで家に帰ったが幾日も起きられなかった。また、子どもを連れて小野寺へ行った人は大蛇を見かけ急いで帰った。
大正の初め頃、下田沼に喜太郎という剣道の師匠がいた。
山で、足袋を履き、眼鏡をかけて顔を布で覆い、鍋をかぶって紐でしっかりと縛り、手袋をして短剣をもった格好で山へ行った。
大蛇が出たら、そのまま飲み込まれ、中から短剣で腹を裂いて出るつもりだという。夕方まで待ったが大蛇は現れなかった。
その後も何度か大蛇を見た人がおり、多田の人はそのたびに大蛇退治をしたが、見つからなかった。
(『田沼町史』p518~519)