常在院の川童
『那須記』(延宝四年・1676年)の巻五にある話。舞台は福島である。源翁は殺生石の割れたうちの一つを衣につつみ奥州へ出かけた。福島県にある常在院にこの石を隠し置きながら寺を修繕していた。
寺の南に小池があり、ささけ(白豆)を植えていたが、川童が池から上がり取って食ってしまう。
川童は川獺が老いてなるものであるという。
これを捕まえ、拄杖で打ち払うと、川童は嘆息して、私はこの池の主で、助けてくれれば望みを聞くと言った。寺内に水を出すように頼むと、次の日、池の水と通じているのであろう清水が湧きだしていた。
(栃木県史編さん委員会編「那須記」『栃木県史』資料編・中世五 栃木県 1976年 p137)