とある地域の妖怪事典blog

下野国を中心として、怪異妖怪俗信など広く拾っていきたいと思います。地域の文化や伝承の再発見、教育のためなど広くご活用いただければと公開しました。

のっぺらぼう

のっぺらぼうといえば顔のないお化けのことだが、栃木県の子守唄「ねんねこどっちん」にはのっぺらぼうが出る。
「ねんねこどっちん亀の子どっちんソラのっぺらぼう」などという歌詞だが、意味はよく分からないため、お化けかどうかもわからない。形容表現かもしれない。
一例として那須郡大山田村のものをあげる「ねんねこどっちん かめのこどっちん それはのっぺらぼう のっぺらぼうに嫁とって追んだした おん出す間もなく 子ができた その子はなに子だ やまねこだ 山ねこ育てる人もなし 俺でも酒買って祝いすべえ」( 國學院大学民俗学研究会編・発行「民俗採訪」昭和二十八年度号 1954年 p11 )
この歌とは違うが、民謡には「向かいの山で光るもの」として一つ目小僧などのお化けが出ることはある。
また歌詞の流用もよくある。
栃木県には小豆洗い婆の歌も伝承された。
徳島には囃し言葉に牛牛坊が取り入れられ、首切れ馬も盆踊り歌になっている。沖縄では耳切り坊主などが子守唄に使われる。このように人気のキャラクターになった妖怪は歌われていることがある。
こののっぺらぼうもそうした一つかもしれない。あるいは形容表現としても、通用するくらいポピュラーな化け物ともいえよう。

参考

「民俗歌謡の分布ーー「向かい山で光るもの」を事例としてーー」「國學院雑誌 」 106巻12号 p1-13 2005年