とある地域の妖怪事典blog

下野国を中心として、怪異妖怪俗信など広く拾っていきたいと思います。地域の文化や伝承の再発見、教育のためなど広くご活用いただければと公開しました。

お化け沼の主

お化け沼は現在の渡良瀬遊水地、谷中村あとにある。地元民がいう呼び名であり、戦中戦後の生まれの者はとくによく使用していた。
お化けというのは「大きい」という意味でお化けのことではないと地元の方々はいう。
「関東タイムス」の昭和十三年七月二十九日号にはそこに大蛇が出たという記事がある。
胴廻り二尺の大蛇でお化け沼の主だという。
この関東タイムスによれば谷中には大蛇がいると、昭和十三年当時より数十年前から云い伝えられていて、だれもみたものがなかったが話は伝わっていたらしい。
(『古河市史こぼれ話市史編さんだより』p8~9)
見方によってはただの生物かもしれないが、主と呼ばれたり、噂が共有されているようだ。
 茨城県古河でも、昭和五十年の調査で、同じく谷中のお化け沼に大蛇が出るという話が伝わっていることが分かる。(古河市史編さん委員会(民俗部会)編『古河市史資料第六集 古河の昔話と伝説』古河市教育委員会 1978年p81~82)
 ここでは二人の人が、お化け沼の中央に馬の脚のようなものが浮き上がったのを見たという。口を開いて、そこから赤い者がベロベロと出たという。谷中には大蛇がいると風評が立っていたため、あれがそうかと思った。
 ふたりのうち一人は、古河へ帰って来ても、蛇の毒気にふかれたのか三日三晩「谷中の大蛇」だとかいいながら熱が出ていた。その熱が出ていた人があとで語るには、あれは蛇ではなく馬の脚だったという。
 もう一人の人は、沼に馬はいないだろうから蛇が鎌首をもたげたのだろうという。