とある地域の妖怪事典blog

下野国を中心として、怪異妖怪俗信など広く拾っていきたいと思います。地域の文化や伝承の再発見、教育のためなど広くご活用いただければと公開しました。

おうらさん

矢板市泉区に伝わる。矢板の平野村におうらさんという人がおり、隣村に嫁いだ。
夫婦仲は良く、お人好しであった。そのため、保証人になり他人の借金のために屋敷まで手放してしまった。それでも黙々と働いていた。おうらさんが三十三歳の厄年のときに家に帰ると、黒い衣を着たお坊さんが家に入ってきて仏壇の前で合掌をはじめた。お坊さんはおうらさんを手招きし、口のなかに米粒ほどの薬をおとした。その後また仏壇を拝んでいるのでお茶を出そうとしているうちに消えていた。
このことがあってからおうらさんは腹が減らなくなり、お茶や水のほかは何も手を出さず、病気をひとつもせずに七十才以上まで生きた。おうらさんは「弘法様からお護符をいただいたから何も食べなくても平気」と信じていたという。