とある地域の妖怪事典blog

下野国を中心として、怪異妖怪俗信など広く拾っていきたいと思います。地域の文化や伝承の再発見、教育のためなど広くご活用いただければと公開しました。

釜ヶ淵の大鯉


真岡市東沼
さくらし(旧氏家市)勝山には、かつて勝山城という城があった。

勝山城には二人の姫がいた。
姉は色が白いので雪姫(イギヒメ)、妹は赤い頬だったので紅葉姫と呼ばれていた。
勝山城が周りの国から攻められ、釜ヶ淵に一緒にお城を出て高い崖から飛び降りた。
それから、ここを通る船乗りたちは仲良く泳いでいる赤い鯉と白い鯉を見かけるようになった。

それからまた長い年月がたって、お爺さんが釜ヶ淵で網を引き上げると、白くて大きな鯉がかかっていた。
喜んで帰ろうとすると、雪姫、雪姫と呼ぶ女の声がした。
三回目の声がしたので振り替えると籠の中から白い鯉が飛び上がって川へ逃げていった。
そしてそれを待っていたかのように現れた赤い鯉と深く潜っていった。
それからお爺さんは思い病気にかかり苦しんでいたある晩に夢で白い鯉がでた。もう漁はしないでくださいというので、了解すると病気はすぐに治ったという。
釜ヶ淵のことを氏家の多くの人は含満ヶ渕や願満ヶ渕とよんでいる。

(伊藤高雄ゼミ:古井歩美「下野民俗聞書(一):平成十八年度「民俗文芸演習」民俗採訪録」p61~62)