とある地域の妖怪事典blog

下野国を中心として、怪異妖怪俗信など広く拾っていきたいと思います。地域の文化や伝承の再発見、教育のためなど広くご活用いただければと公開しました。

古峰ヶ原(遠野物語拾遺)

 野州古峰ヶ原は火伏の神として遠野地方にも信心する人が多いと、遠野物語拾遺の六五にある。

 この神様は非常に山芋が好きだということである。講中のものは競って山の長芋を献上する。その献上の仕方は自分の屋根の上へ古峰ヶ原の神様に上げますと言って芋を置くとその次の朝にはもう見えない。

 そうして後になって、その神社から礼状が来る。あるとき上郷村のものが講中に加わって野洲の本社に参拝し、自分が長芋を持参せぬのを、家のホラマエに置いてきたと嘘を言った。そうすると社務所ではすぐに人をやって取り寄せるという。

 翌朝神社の人が言うには探させたけれども長芋は見えなかった。そのしるしに少々見せしめをしてきたというので村へ帰ると丁度その晩に小屋が焼けていたという。土淵村の家でも太く見事な芋はとっておいて、細いものばかり屋根へ上げたところ火事が起こって家が焼けてしまったという。(「遠野物語拾遺」『新版遠野物語 付遠野物語拾遺』角川学芸出版 p107)