八内猫
高林の禅寺に高林寺というのがある。その寺の裏に墓がある。木綿畑新田の住人が大田原に駄賃付けして、夜そこを通りかかったらにぎやかな三味、太鼓の音がした。のぞいてみると狐と狸が躍りを踊っていた。
その歌の文句に「八内猫が来なければ、さっぱり調子がそろわねぇ」とある。
駄賃付けはたいしたもんだと見ていると、新田の八内という人の飼い猫が手ぬぐいを食わえてきた。
「馬鹿に今晩は遅いな」と狐がいうと「今晩は麦雑炊で熱くて食われなかった」と答え、それから3匹で踊り出した。
それで八内さんのところへとんでいって何か不思議なことはないか、とたずねると「何もないが柱にかけている手ぬぐいが朝になるといつも濡れている」といったという。
安政五年生まれのおばあさんから話者が聞いた話。