小豆とぎ婆さま
芳賀郡逆川村小貫の明神様の門あたりに晩方になると、小豆とぎ婆さまが出て、ヂャッカヂャカジャッカチャカと小豆をとぐ音が聞こえるという。
逆川村大字深沢の清水の「ムカヒ坂」の橋のところに小豆とぎ婆さまがいて、そこを帰るとヂャラヂャラと小豆をといでいる音がする。
逆川村大字北高岡の前久保のアカボッケの橋の下に小豆とぎ婆さまがいておっかないから晩方そこを通るなといっている。
逆川村大字飯では夕方になると川のふちに小豆とぎ婆さまがいて、遊んでいる子どもを隠してしまうから晩げ暗くなるまで外で遊んでいるなと子どもらをいましめる。
芳賀郡須藤村生井ではコヤンパタ(永島注 小屋の傍の意味か)の沢に小豆とぎ婆さまが夕方になると出て人をさらうから夕方まで遊んでるなという。
これらの事例は全て高橋勝利「米とぎ婆さまと小豆とぎ婆さま」(高橋勝利編「芳賀郡土俗研究会報」1号 芳賀郡土俗研究会 1929年)による。最後に高橋は、この婆さまは隠し神さまだと言われるし、伝説としては山姥伝説に入るものであろうかと考察している。