思川の狸・投石
思川の狸は、夜づりの人をおどかしもした。鉄橋下から天翁院下までの間で、上流から流して釣糸を遊ばせて来ると、突然、大きい蛇籠が三つ四つ、廻転しながら流れてくる。驚いて糸をたぐり寄せて岸に上ると、どこから共なく、拳大の石が飛んで来る。捨て舟や立ち木に身をよせていると、石ははたとやむ。やれやれと気がゆるむと、魚が盗まれているという筋書きで、昭和十年までよく出会ったものである。(「民俗随想 忘れ柿(小山化かされの巻)」)
思川の狸は、夜づりの人をおどかしもした。鉄橋下から天翁院下までの間で、上流から流して釣糸を遊ばせて来ると、突然、大きい蛇籠が三つ四つ、廻転しながら流れてくる。驚いて糸をたぐり寄せて岸に上ると、どこから共なく、拳大の石が飛んで来る。捨て舟や立ち木に身をよせていると、石ははたとやむ。やれやれと気がゆるむと、魚が盗まれているという筋書きで、昭和十年までよく出会ったものである。(「民俗随想 忘れ柿(小山化かされの巻)」)