とある地域の妖怪事典blog

下野国を中心として、怪異妖怪俗信など広く拾っていきたいと思います。地域の文化や伝承の再発見、教育のためなど広くご活用いただければと公開しました。

壁を抜ける猫

実話怪談の本、戸神重明『恐怖箱 深怪』竹書房 2015年
にある話。
洋風住宅でキッチンの方から猫の鳴き声が聞こえるので行ってみると白い壁から猫の首がつきだしていたという。
大声で叱ると猫は壁から飛び出し足元をすり抜けると庭へ出てどこかへいってしまったという。調べてもリフォームをして壁を壊しても特になにもなかったという。
(同書 p86)

お花渕

 塩谷郡喜連川町に伝わる。

 昔、お花という娘がいたが、ある事情により両袖に石をいっぱい入れて身投げをした。それからお花渕というようにになった。荒川・内川の落ち合ったところから少し下ったところである。死体は見つからず、今も堰普請はじめると、たとえ晴天の日でも雨が三粒なりと降ると言われる。(喜連川町誌編さん委員会『喜連川町誌』栃木県塩谷郡喜連川町 1977年 p523)

おたけさん

小山市間々田におたけ坂という坂がある。

付近の小学校に通う児童は山からおたけさんという幽霊がおりてくるという話があり恐れたという。

令和現在の子どもは知らないようだが昭和の後半までは語られたようだ。

 観光のためのサイトでは以下のようなことが書かれる。

江戸時代、日光街道・間々田宿のある旅籠に「おたけ」という、親孝行で美しい看板娘がいた。
おたけは、将来を誓った相手である使用人・佐平がいたが、親の決めた縁談を断りきれず、ついに2人で家を出ることを決意する。
婚礼の前夜に、上州に逃れようと家を出た2人であったが、見つかってしまい、追いついてきた者と揉み合いになった末、彼らが手に持っていた鎌が当たり2人とも亡くなってしまう。
かわいそうなおたけに同情した人々はいつしか彼女たちの墓碑のあるこの坂を「おたけ坂」とよぶようになった。」(とちぎ旅ネット https://www.tochigiji.or.jp/spot/7862/ 2020年7月20日閲覧)

この話とは別におたけという女性に関する説話は各地にみられる。

おたけとは江戸時代に実在したとされ、大日如来の化身だといい各地に墓などが残っている。江戸時代の流行り神ともいえる。ところがここでは学校の怪談と化している。在地の伝承が学校で語られるのは本来自然なことである。

 

 

七夕の美男美女

 田沼町旧野上村に伝わる。

七夕の朝、メズラエンゲンをとりに畑へ行くと、女なら美男が男なら美女が出るという。しかし敢えて行くと気が変になるという。また十時前にそうめんを食べると風邪をひかないという。この日墓掃除をする。

(国学院大学民俗学研究会編・発行『民俗採訪』四十一年度 1967年 p112)

ルスンギョー

田沼町旧野上村で盆の十五日には、成仏できず盆棚へ来ることのできない霊を弔うための墓参りをする。このとき茄子を切ったものと団子をあげる。この成仏できない霊をルスンギョーという。

(国学院大学民俗学研究会編・発行『民俗採訪』四十一年度 1967年 p112)

田沼町旧野上村に伝わる。

五月の辰の日には田植えを嫌う。この日田植えをすると竜に巻き上げられ、上り上り死ぬという。

(国学院大学民俗学研究会編・発行『民俗採訪』四十一年度 1967年 p103)

狐の嫁入り(田沼町)

 田沼町旧野上村での話。

 昭和四十一年度の調査によると、九年ほど前とつい最近にあったという話。

 四十ワットくらいの橙色の電灯のようなものが二三間おきに次々とついたり消えたりしながら関氏の家から、落合氏の家の竹藪の中へ移っていったのを見た。狐の嫁入りだろうという。 

(国学院大学民俗学研究会編・発行『民俗採訪』四十一年度 1967年 p101~102)