和光院の狐(戸叩き型)
栃木市に伝わる。皆川寺明院の末寺の東宮和光院というお寺が城内神田にあった。住職は素頓(すとん)坊といった。
素頓坊は夜な夜な誰かに起こされる。
寝ずの番をし、戸の隙間から外をうかがっていると、大きな狐が現れ、そのふさふさしたしっぽで戸を上から下に擦ると「スー」という音がする。次にしっぽで戸を叩くと「トン」という音がする。これを何度も繰り返すとスートンと聞こえる。
尾を擦り付けたときに勢いよく戸を開けると院内に飛び込んだので灯をつけてると、十一面観音が二体ある。
「どちらが狐かわかりませんので、どうぞ御本尊様、本物でしたらお手をおあげ下さい」とお願いすると手をあげたので狐とわかり捕まったという。
(『栃木市史 』民俗編 p754~755)