黒磯市寺子に伝わる。昔、上野原と呼ばれる広野原に十月の候の暖かい夜明け過ぎのころ夕方、蒲蘆(今でいう蜃気楼だという)が出た。
広野の草木が人馬の姿となって現れたり、数万の人数が群集して往来する様子が現れたりしたという。
また、大田原市親園(ちかぞの)にも蒲蘆の伝説がある。
(尾島利男『下野の伝説』第一法規出版 1974年 p106)
村上健司『日本妖怪大事典』には蜃気楼の項目がある。蜃気楼はかつて怪異とされ土地により様々な呼称があったという。海上に限らず蜃気楼は陸上にも現れ、武蔵野名物とされた逃げ水や、この蒲蘆もその一種であると並記されている。