庚申山の猿になった子
八嶋定岡の『猿著聞集』(文政十年序)の二巻の「足尾村の何がしが子山に入て猿になりし事」による。
足尾のある人の子どもがどこかへ行ってしまった。両親はとても悲しみ、十日ばかりして庚申山という山へいった。岩の上に猿がたくさん遊んでおり、そのなかに我が子に似た顔のものがいる。
名前を呼ぶと来て、父親の絹にとりついて泣いている。見ると、毛が生え猿になっていた。
泣く泣く抱いて家に連れ帰ったが、木の実ばかりを食べていたという。
直接見た人が物語ったことを「沼田の里の松風軒の主」が手紙におこしてきたものを書いたものだという。
ちなみに『猿著聞集』の前段は「赤岩庚申山の事」として庚申山の土地について詳しく書かれている。