とある地域の妖怪事典blog

下野国を中心として、怪異妖怪俗信など広く拾っていきたいと思います。地域の文化や伝承の再発見、教育のためなど広くご活用いただければと公開しました。

ズイトン

芳賀郡東高橋では子どもが遅くまで起きているとズイトンが来るぞとおどかされたという。
ズイトンは主屋に雨戸の穴を見つけると尻尾を入れてきてズーイと引っ張るのだという。その抜けたときにトンと音がすることからズイトンと呼ばれているが、その姿はわからない。
( 立石尚之「ズイトン」小松和彦常光徹監修 香川雅信・飯倉義之編『47都道府県・妖怪伝承百科』丸善出版 2017年 p86)
こうした音をさせる狐や狸の話は各地にある。 このズイトンももとは狐や狸の意味が失われたものであろう。昔話になると寺でやり込められるパターンが多い。
また古典落語の「権兵衛狸」にも「狐狸は尻尾で戸を叩くなど諸説あるが、本当は頭で戸を叩く」という箇所があり、こうした話題になるくらいに狐狸が尾で戸を叩くということは共通の知識として需要されていた。
名前の似た妖怪として岡山県蒜山高原では、一本足でスイーッと飛んできてトンと立つスイトンという妖怪が伝わっている。戦後は演習場から観光地として有名になった蒜山高原にはスイトンの像も立ち始めたそうだ。一本足の妖怪というのは多い。(木下浩編・著『岡山の妖怪事典ー妖怪編』岡山文庫290 日本文教出版 2014年p94~98)
この岡山のスイトンも他の地域のように戸を叩く妖怪だったかもしれない。

類話
yokai-tochigi.hatenablog.com
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