南河内の薬師寺一丁目に下陰(したかげ)というところがある。そこには丘があり稲荷神社があるので、そのあたりを稲荷台(いなりだい)といった。そこから、田中の方へ下る坂を夏目坂という。そこには狐にまつわる話が伝わる。
ある若者が家に帰ろうとしたが大きな川があって帰れなかったという。しかし、付近にそんな川はないため狐に化かされたのだという。
また、夏に稲荷台から西田中の方へ提灯行列が見られ、数えきれないほどの提灯とがやがやとにぎやかな声がするので近づくと明かりはふっと消えあたりは真っ暗。闇のなかで狐の鳴き声が聞こえたという。(南河内町立図書館編・発行『みなみかわちの伝説』2002年 p28~29)