馬首の井戸・馬影の井戸
大中寺七不思議の一つ。
現地には馬首の井戸として看板が出ているが、『大平町史』やその参考元である『大平町ふるさと民話おおひら風土記』など馬影の井戸と書かれたもある。
土地の豪族晃石太郎が大中寺に皆川との戦いに敗れ逃げて来た。住職は匿うことをしなかったため、晃石太郎は愛馬の首を斬って井戸に投げ、自害した。
その後井戸から馬のいななきが聞こえるようになったとか、覗くと馬の首が浮かび上がるという話が聞かれるようになった。
(大平町図書館編『大平町ふるさと民話 おおひら風土記』1991年 p15~16)
『山城谷村史』(山城町役場 昭和35年)の平家の落人が馬を放ったところ崖から馬が落ち死んだので「馬ころばし」の地名になったなど落ち武者が逃げる途中で馬を殺す伝説のバリエーションの一つとみることもできよう。
また、「井戸の怪」の一つとして見れば皿屋敷や貞子などに通じる。「馬の首を投げ入れる行為」というモチーフを見れば、雨乞いなどの呪術にも同様の行為はある。井戸という恵みを消失させているため、雨乞いよりも牛馬による「温泉消失伝説」と近似の発想だろう。
また馬の首自体が妖怪として出るものも、三宅島の「首様(コーロベサン)」や岡山の「さがり」、東北の「学校の怪談」など各地にみられる。
また関係があるかはわからないが、昔話の化け物寺にはトウヤノバズ(東野の馬頭)などの馬の頭の妖怪が出ることもある(http://irui.zoku-sei.com/話題―妖怪/化け物寺に見られる妖怪 2018年10月11日閲覧)。
参考
永島大輝「温泉消失伝説」昔話伝説研究会編・発行「昔話伝説研究」37号 2018年