とある地域の妖怪事典blog

下野国を中心として、怪異妖怪俗信など広く拾っていきたいと思います。地域の文化や伝承の再発見、教育のためなど広くご活用いただければと公開しました。

岩船山 孫太郎尊

岩舟町に伝わる。孫太郎尊はこの山の地主権現で天狗といわれ、羽団扇を紋にしている。
隣の村に昔、毛虫大尽という情け知らずの嫌われものがいたが、ある夏の夕方、孫太郎尊の社から一羽の大きな烏が出て、毛虫大尽をくわえて飛んでいった。着ていたものはひとまとめになって空から庭へ落ちてきたという。
また、清吉という親孝行な子が親の看病で山へ薪をとりに行けなくなったとき、毎朝戸口のところに薪が置いてあった。
親が良くなったので、孫太郎尊のところへいくと、薪のくずや縄の切れ端が社の前に散らばっていたという。
(岩舟町教育委員会編『岩舟町の歴史』岩舟町 昭和49年 p388~389)
  その後新たに行われた、高橋成の調査によれば、次のような話もある。
 ①江戸時代、幕府が日光山に参拝するために、この岩船山を通るので、 孫太郎尊の妨害を防ぐため、多くの武将が刈り出された。 ②昔、孫太郎尊の本尊を盗んだ者がいたが、数々の祟りを受け、どう しようもなくなり本尊を還しに来た。 ③現住職が生まれたとき、孫太郎が山の上からその様子を見ていた。 ④孫太郎尊によからぬ関心があって、寺にくる者がいると、今 でも山が荒れる。 ⑤孫太郎に一度詣でたら、続けて詣でないとへそを曲げる。 ⑥前の住職が本尊を移そうとし、腰を悪くした。 ⑦現在もだが、見える人には孫太郎天狗が見えるという。山の木の上に、 鳥のような者が立っていた。 ⑧岩船山の下の方にあるクリフステージで、イベントを開催 しようとすると、山が荒れる。しかし開催直前になると雨風がピタッ と止む。このようなことは、毎年続いている。孫太郎はいたずら者。
 (高橋成「孫太郎天狗の信仰」下野民俗研究会編・発行「下野民俗」47号 平成26年p33~36)
 いたずら者だが正しい者には優しく、そうでないものには厳しい性格とされているようである。