とある地域の妖怪事典blog

下野国を中心として、怪異妖怪俗信など広く拾っていきたいと思います。地域の文化や伝承の再発見、教育のためなど広くご活用いただければと公開しました。

釜が渕の大鯉

 勝山城は現在公園になっているが、宇都宮の北東を守る要害の地にあった。城の西側は断崖で、下を流れる鬼怒川は淀みをつくり、釜が渕と呼ばれた。

ある時、勝山城が敵に攻められることとなった。城には二人のお姫様がいて、お姫様の身の上を気づかった城主は円満寺(上河内村東芦沼)に身をかくまわせ、軍資金とオサ(織物に使う道具)を寺の井戸に投げ入れたという。

 お姫様を預けてから間もなく、城は落城し、このことを知った二人のお姫様は城の松の木のところから釜が渕に身投げをした。

 そして二匹の紅白の大鯉になり、城跡を見守った。

 ある時、漁師の網に白い大鯉がかかったが、「雪姫、雪姫」と呼び、姿を消してしまった。

 また、ある時、芦沼村の漁師が投網をして紅白の大鯉を捕まえた。漁師は魚かごにいれ、夜道の河原を帰っていくとかごがだんだん重くなり、肩に食い込むほどになった。

 漁師は息を切らせて川岸まで戻ったが、突然「もしもし」と女の人の呼ぶ声がした。

 周りを見回すが、誰もおらず、再び「もしもし」と声をかけられたので、一目散に逃げかえったが、家に着くと高熱を出し、大病にかかったという。

 その後、二匹の鯉はお姫様だと言われ、この場所に投網を入れる者はなくなったという。