カネダマ
県内各地に伝わる。
野木町では明治四十一年生まれの女性が十歳くらいの時に川田(野木町)で盆の十三日に仏様を迎えに行った帰りに、「おっきな火の玉」を見たという。昔は今と違い忙しかったために、盆も夜になって夕飯を食べてから子どもたちが提灯をつけて墓場に迎えに行った。帰りに大本宅の稲荷様の辺りに来た。そこは大尽の家だったので屋敷が広く、大きなケヤキやエノキの木がたくさんあって昼間でも真っ暗の「おっかない場所」であった。丁度その稲荷様の木の真上辺りから、花火のように火の玉がドーンとあがったという。
足元が真っ赤になって、そこへ提灯ごと転んでしまった。
大人に話すと、それはカネダマだという。
昔はその家は算術が得意で古河様に仕えたという。金を貯めて、小判などを稲荷様の下に埋めていたのであろう。それでその小判が誰にも掘られないので出たと言われた。
近所の人たちも「あれはオモテのうちのカネダマだ飛んだんだ。だからオモテのうちはハー潰れんぞ」などと言い、実際にその後その家は没落したそうである。
あとになってからその火の玉をふところに入れて来れば良かったと言われたが恐ろしくてそれどころではなかったという。
(下野民俗研究会月曜会『民話の海へ とちぎの新しい民話集』随想舎 1994年p208~211)
日光市匠町では、カネダマが家に入り込んで、大金持ちになった家があると伝えられている(同上p211)。