とある地域の妖怪事典blog

下野国を中心として、怪異妖怪俗信など広く拾っていきたいと思います。地域の文化や伝承の再発見、教育のためなど広くご活用いただければと公開しました。

夜泣きの稲荷

真岡市道祖土の高松家に伝わる伝説。

七郎左衛門の奥さんが子供を産んだ時に、油揚げが食べたいというようになった。御嶽行者にみてもらうとキツネが憑いているという。巫女にキツネの話を聞かせてみると「もとは城山にいたキツネだが、城がなくなって頼るところがなくなった。小林の常法院に行ったところ、頼れるのは道祖土しかないと言われ、ここの奥さんに憑いた。社を建てて祀ってくれれば悪いことはしない。反対にこの家を守る。証拠として書いてくれてもいい、ただし主人ではなく弟の保三郎(七郎左衛門の弟)に頼みたい」という。そこで保三郎に書いてもらうと、キツネはそれを読み「裏の廊下についている足跡を誰にも見つからないようにふき取って欲しい。そしたら俺が三つ鳴くから。それで憑き物も必ずとれるぞ」といって裏山に消えた。七郎左衛門は社を建て、母子は健やかになった。

 以来、高松家の裏山には氏神として稲荷が祀られ、地域の人々にも、赤子の夜鳴きをとめる御利益があると「夜鳴きの稲荷」として広く信仰されている。